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 グラスホッパー

斗真 映画

原作は出版当時に読んでいましたが、10年くらい前と言う事もあり、すっかり記憶が抜け落ちていて、まっさらな気持ちで見る事が出来ました。続編というマリアビートルは読んでいないのですが、マリアビートルの方が面白いらしいですし、鈴木ちょろっと出ているらしいのでマリアビートルもいずれ作品化されたら見たいですね。

巻き込まれ型エンターテインメントを自負するこの作品。
確かにメインの3ピースは、3人とも寺原親子を中心に集まって来たピースであり、3人とも渦に巻き込まれて行くわけですね。そこに観客も加わり、4者が社会の悪意だとか凶暴さに巻き込まれて行って、先がどうなるのか飽きさせない展開になってると思います。バラバラの3ピースが最終地点で一緒になる訳ですが、鯨と蝉は飛び入り扱いなんですよね。なので、あくまでもメインストリームからは外れた存在であるという。ただ、ちょっと残念だったのは鯨と蝉はピースが合致してたんですが鈴木とはあくまですれ違いだった事ですかね。

この映画に関しては、斗真の映画だからどうこうという前に一つの映画としての自分としての評価は、「終わり方がイマイチ」というのと、「巻き込まれ型というわりには緊迫感に欠ける」という感想があったりしまして、、ひとまず自分の好きな点から。

個人的に好きな点
・鈴木の路上営業シーン。ここが一番鈴木の喋り方が気持ち悪くて好き。ここがクランクインだという事ですから、一番こういうイメージで行こうというのが具現化しているのかな。
・鈴木がファミレスで寝ちゃってるシーンでぐるりとカメラが回転すると比与子がいるシーン。絶対クスっとしちゃう。
・蝉と岩西の絡みは微笑ましい。不器用な男2人の相棒感が出ているので、最後に岩西を思い出しながら戦っている蝉の方が鯨に比べて救いがあるなと感じられる。
・蝉の足メインのアクション。上背がない分、足技が映える気がする。良かった。
・鈴木と百合子さんの微笑ましいシーン全般がほっとさせてくれます。ダサい鈴木が愛しい。
・槿との2ショットでの会話シーン。吉岡さんの不気味な存在感がかなり効果的。特に無音の中で槿がトノサマバッタの群生相の説明をシーンをしている姿はただただ異質感しか感じず面白いシーンになってるなと。
・チビタツこと小林喜日くんとサッカーシーン。これはもう解る人だけ浸りましょう。


個人的な不満点
アンダーグラウンド組織を見せすぎて、種明かしのインパクトがない。メッシュの女を意図的に何回も見せ過ぎて何かあるなとわかりすぎてしまう
鈴木を補助しようと見守っている男メンバーも一般人から浮きすぎてて目立ちすぎててやっぱり何かあるなと思わせぶり。正直ちょっとクドかった。メッシュの女は最後だけ出て来たらかなりインパクトあったのに、鈴木が嬲られるシーンでも延々抜かれてて緊迫感ゼロ。鈴木助かるじゃんってわかっちゃう。絶体絶命感がなんか足りないんですよ。メッシュの女を見せずに鯨が登場して、最後の最後にメッシュの女登場して殺すという方がインパクトあったと思う。

・敵対組織をわかりやすすぎるほど見せているのに、また最後に延々と観覧車の中で種明かしを聞かせられる
個人的にはものすごい蛇足感を感じました。いや、そんな一から説明しなくてもわかるってっていう。そのくせ肝心の子供がなんであのスクランブル交差点にいて何の役割を担っていたのかが不明。指輪を返して一瞬大団円的な感じを装ってますが、事件発生が 10/31、夏の2日間が 8/5.6でその一年後が観覧車なので冷静に考えると約2年経ってるわけですね、もうちょっと早く返せただろうと思う訳ですよ。冷凍食品食べるのも、さすがに1年後って遅すぎてお腹壊しちゃわないかと余計な心配しちゃうわけですよ。鈴木が立ち直るのに1年必要だったのかもしれないけど、最後の最後に余計な事考えさせられちゃって気になってしまう。せめて半年後でどうか。

・最後の最後にピエロ姿
映画として成立してれば主役のファンとしてそれで良いんですけどね。良いシーンでピエロ姿なので、ピエロの必然性がそこまであるのかどうかっていうところに意識が行ってしまいました。

・もらった結婚指輪をすぐケーキに入れて焼く
百合子のちょっとズレてる感を表しているみたいですが、こんな女やだ・・・

グロは脳男に比べたら可愛いもんですね、しかし虫注意な映画にはなってます。正直初めて見たときは、グラスホッパーの群舞やアップ、Gが2回も登場にウっとなり。まさか2015年の映画作品どっちにもGがでるなんて思ってなかったよね!(笑)

斗真について。
今回自身の持つ格好よさは捨ててあくまで普通の男を演じた訳ですが、これはきちんと成立していたなと思いました。普通を頑張って演じてるけど結局格好いいよね、とはなっていなかったかなと。瀧本監督から白飯のような存在でいてくれと言われたようですが、きちんと白飯としての役割は果たしていましたね。鈴木以外はアンダーグラウンドな世界に身を置く存在なので、鈴木が出てくるとほっとしてしまうんですよね。鈴木はあくまで一般市民なので復讐を考えてはいるものの銃は奪う度胸はないし、どこかへ逃げる勇気もなく、策があるわけでもない。愚直なまでの存在である事で、観客としてはその無力さをどこか自分に置き換えられつつ、鈴木の味方に素直になれたのではないかなと思います。

冴えない演技も多少オーバーな面はありつつも、自然な冴えなさが出てましたね。特に自分がすごいなと思ったのは、立ち振る舞いや仕草や喋り方からだけじゃないダサさを滲みださせていたのが結構驚きでした。なんだろう、百合子との2ショットの写真とか、百合子を後ろから抱きしめるところとか、いっぱい口に含んで食べてるところとか、絶妙にダサいんですよね。
そんなダサくて幸せいっぱいな過去の鈴木と現在の冴えないけれど慣れない復讐をしようとしている鈴木の対比が絶妙に演じられていたなと。

以下、インタビューメモ。

瀧本監督
「『脳男』ではすごく振り切れた役柄だったので、今回は「普通の男」としての斗真を撮りたいと思ったんです。」
生田「鈴木は「普通の男」で運動が得意なわけではないので、そこはかなり意識しました。ただあまり極端にやると「そういうふうに見せたいのね」と思われるので、そのさじ加減が難しかったです。」
瀧本「今回はあえて力を抜いてもらった。いわば引き算の演技ですね。」
生田「比与子が置いていった拳銃を見ているとき、監督から「殺し屋の目になってるよ」と注意されましたね」
野生時代 2015.11)

生田「今回、瀧本監督からは、息の芝居がテーマだと言われたんです。走っている時や、電話している時、息で感情を伝えるというのがテーマでした。」
キネマ旬報NEXT 2015 vol.09 No.1700)

生田「走り方とか姿勢は難しかったです。走ること自体がそんなにない人だから足がもつれてコケそうになるかもとか、走り慣れてないと手が先に前に出ちゃったりするのかなとか。鈴木に成り切ってあのような走り方になったというよりは、嫌らしいけど、ある程度そういうのを入れてました」

とはいえ、周りの人物が濃い分、存在感が薄くならないかという懸念は?「印象に残すことが仕事じゃないので、気にしませんでした」
「今回はずっと意図的に曇らせていました。鈴木の性格ということではなく、そんなところにも気が付かないほど混乱しているという。メガネが奇麗だとおかしいんじゃないかと、たびたび指紋をつけるようにしました。」
TVfan cross vol.16